“Sphinx Legacy” 編纂記 第18回

加藤英夫

出典:”Sphinx”,1911年2月号 執筆者:A.M. Wilson

“Sphinx”1911年2月号では、Selbitのことが取り上げられていますが、Biography的な紹介のあと、彼が考案したマジックについていくつか紹介されています。以下に書かれているのは、Wilsonの記事からのものではなく、私が他のサイトから見つけたものをもとに書いています。

そのあとSelbitについて色々と調べるうちに、彼が’Bewildering Blocks’というマジックの考案者であることがわかりました。以下にアクセスすると、Paul Danielsがテレビで演じている動画を見ることができます。

いまのところ、仕掛けが想像できません。とても不思議です。Denis Behrの”Conjuring Archives”によると、”Classic Magic with Apparatus”(1976年)に、このマジックが解説されているとのことです。以下は、オーストラリアのマジックショップのこのトリックの広告です。商品名が’Selbit Blocks’となっています。

Paul Daniels以外の動画も見ましたが、Danielsの演技が傑出していました。Danielsは4個のブロックでやっていますが、6個でやっている演技もありました。調べたところ”Magic Cafe”につぎのような投稿がありました。

出典:”Magic Cafe”,2008年11月11日 投稿者:Geoffrey Duham

P.T. Selbit invented the trick and put in on sale in 1906, using four blocks and a very ingenious mechanism inside the tube. Conradi put his version on sale in 1907, using the same mechanism but six blocks. Thus it is variously known as both the Selbit and the Conradi Blocks.

My routine (in which the six blocks all turn upside down in the tube at the climax) is, as you say, featured in my book. It has always been popular with magicians.

Geoffrey Duhamはイギリスのプロマジシャンで、’my book’と言っているのは、’Professional Secrets: A Life in Magic’ (2008年)という、彼が書いた本のことです。

6個バージョンは以下のアドレスで見ることができます。 

マジックでは、使う道具や要素を増やすことが、現象の改良になる場合と、改悪になる場合がありますが、このマジックの場合は後者であるような気がします。4個での現象の方が現象がクリアに見えますし、6個だと操作に時間がかかりますし、動作の煩雑さも増えます。”Magic Cafe”におけるこのマジックの論議においては、6個のブロックを縦に重ねるのは、けっこう気を使うとも言っていました。

そして、別の6個を置いておく必要があるのでしょうか。別の6個を使うとしたら、そちらの方を並べ替えると、筒の中のブロックも並び方が呼応するとすれば、それらを使う意味はあります。しかしながら、それでもDanielsのやり方を超えるものではありません。マジックでは、要素を簡潔にすることによって、現象の魅力の輝きが増すことがあることを、Danielsの演技から学べると思います。

別の6個もしくは4個を置いておく代わりに、数の順を決める別の表示方法が採用された例が、”Conjurers Monthly Magazine”,1907年8月号に掲載されているのを見つけました。同じ見かけの道具を並べて演ずるよりも、まだこちらの方がよいと思います。

つぎの動画を見ていただくと、6個でやることや、別のセットを使うよりも、4個だけで演じることによって、現象をはっきり見せることができることが、さらに確認できると思います。最後に数の順に整列したブロックが、客が指定した順に変化するクライマックスは、どう考えてもわかりません。

以上のようにまとめてしばらくしてから、このマジックについて別のサイトでの説明において、最後に客の指定した順に並ぶという現象について、つぎのようなことが書かれていたのを思い出しました。読んだときはその重要性に気づかなかったので、どこに書かれていたか記録していません。

最後は、客に数の順番を指定させます。そしてその順番とは異なる順番でブロックを重ね、そして筒をかぶせます。それから筒をどけると、客が指定した順番に変化しています。

もしかすると上記の動画は、動画の見栄えがよくなるように、整列したものが指定されたものになるように、子供に数を言わせたのかもしれません。

‘Bewildering Blocks’は、広島の(有)セオマジックのサイトに広告が出ていますが、2020年12月31日現在、品切れと表示されています。

(つづく)