“Sphinx Legacy” 編纂記 第64回

加藤英夫

出典:”Billboard”, 1944年11月25日 執筆者:Bill Sachs

Kevin Jamesに先行していたマジシャン

Rajah Raboidはいま、New YorkのQueensboro Theaterで公演中の’Naughty Marietta’というミュージカルにおいて、彩りを添えるアクトとして、2週間にわたる出演の真っ最中です。

“Magicpedia”におけるRajah Raboidの紹介のうち、つぎの一文が目に止まりました。

1930年代後半、彼は”胴体切断”をJohnny EckとRobert Eckの双子を使って演じました。

‘双子を使って演じた’ということが引っかかりました。通常の箱を使ったやり方なら、足の方も本物の足を使うとしても、双子である必要がありません。「もしかして、切断された状態で見せた半身と、復活した状態の顔が同じであるというやり方をしたのだろうか」と閃きました。

そして検索した結果、John T. Soister著”Down from the Attic”(2016年)に、つぎのように書かれているのを見つけました。

‘The Horror’というショーでの見所は、ステージマジシャンでありメンタリストである、Rajah Raboidのアクトでした。彼は1920年代にたいへん活躍したエンタティナーです。彼の後期におけるメインのアクトは、Johnny Eckを採用したものでした。EckはTod Brownigのホラー映画’Freaks’に出演した、脚のないタレントです。Eckには普通の身体を持った双子の兄弟がいました。Raboidはその人を使って’胴体切断’をやって、切れた上半身だけが箱から出てきて、「俺の脚はどこだ!」叫びながら両手を使ってステージを駆けまわります。

何とケヴィン・ジェイムスの’胴体切断’のマジックで使われている手法が、はるか昔に使われていたことがわかって驚嘆いたしました。さらに調べると、そのことがはっきりわかる写真が掲載された“Johnny Eck Museum”というサイトが見つかりました。

写真は同サイトからの引用です。この写真に添えて、演じた’胴体切断’の説明もありますが、前述のものとほとんど同じなので割愛いたします。同サイトには他に何点かの写真もありますし、Raboidの新聞記事の切り抜きなどもあります。以下のアドレスでアクセスできます。

http://www.johnnyeckmuseum.com/magic/rajahraboid.html

Johnny Eckの動きを見ることのできる以下の動画を見つけました。彼の使っていたマジックの道具を見ることもできます。

この動画で紹介されている黒板の仕掛けは、いままで見たことも読んだこともありません。うまく作れば、絵を現すことにも使えそうです。

(つづく)