“Sphinx Legacy” 編纂記 第11回
加藤英夫
今回は、いくつかの気の利いたアイデアを集めてみました。
出典:”Sphinx”,1913年6月号 執筆者: Ralph Brown Graham
Why do so many magicians drape only three sides of their tables? It would look much richer to see the covering go all the way round, more natural at any rate. People never see the backs of magicians’ tables? Well, those down front can often see up under the table and even see the nifty little servante as it hangs in place. The full drape would cost but little more and might often prove of value.
言われてみればもっともです。マジックテーブルはたいてい、前と左右だけ3面にドレープが掛けられていますが、なぜ4面にドレープを掛けないのか、という指摘です。客席の方が低い場合は、テーブルの後ろについているサーバントが見えることがあるというのです。
これを読んで思いついたことは、後ろのドレープは、テーブルの後縁から下に垂らすのではなく、後縁より少し内側に垂らすことによって、サーバントなどを後縁より内側に位置させることができるということです。それだけネタを隠しておくスペースが広がります。
出典:”Sphinx”,1902年9月 執筆者: Haward Thurston
これはHoward Thurstonから”Sphinx”編集部への手紙の一部です。この中に”Sphinx”で’Imro Fox’の名前が初めて登場します。
Imro FoxはロンドンのEmpire Theaterでの毎年恒例の公演を、たいへんな好評を得て終えました。彼はつぎのような新しいアクトを創作いたしました。入り江の洞窟の入り口のような所で、古くからあるようなトリックを演じたあと、シーンが王宮の美しいアーチに変化します。そしてそこで新しいマジックを演ずるのです。このアクトはヨーロッパでは演じていません。彼は8月9日にアメリカに向けて出発いたしましたが、そのアクトで華々しくアメリカでの帰国公演で披露して、大喝采を浴びるに違いありません。
原文では”presenting a transformation scene”と書かれていますが、これがマジック的に背景が変化するのかどうかは不明です。いずれにしても古い感じの背景の前で古いマジックを演じ、新しい感じの背景の前で新しいトリックを演ずるという洒落た演出であるように思われます。このアイデアは背景の変化と演ずるマジックとの組み合わせではなく、衣装チェンジと演ずるマジックとの組み合わせにも適用できそうです。衣装に合ったマジックを演ずるということです。
出典:”Sphinx”,1910年1月号 執筆者:A.M. Wilson
Perfect Magic Square For The Year, 1910
It may be of some interest to scientific and mathematical readers to note the mysteries in the magic square in Fug.2. It has been figured out by Mr. Theodore L. De Land, jr., who claims that the principle was known to the ancients. As applied to years it can occur only once in every ten. There are no two numbers alike, running only from 370 to 394, inclusive.
これは、5 x 5の魔方陣で、年号を現す方法を説明しているものです。魔方陣を説明しているだけで、マジックとして演ずるものとして書かれているわけではありません。魔方陣で年号を表すというアイデアを利用したマジックのやり方を思いつきました。5 x 5では計算がたいへんですから、3 x 3の魔方陣を使います。
1~9の数を3 x 3に置く魔方陣があります。それらすべての数に669を加算したものを3 x 3に書くと、すべての列の合計は2022になります。670~678までの数を使うことになります。表面ブランクカードをストリッパー加工し、それぞれに670~678までの数を書きます。重ねた9枚の上の4枚と下の5枚を方向違いにします。
9枚を表向きに広げて、数が混ざっているのを見せます。上の4枚と下の5枚を相手の前に裏向きに置き、どちらの山からでも1枚取って、2つの山の間に置き、つぎにどちらの山からからでも1枚取って間の山に重ねる、というのを左右の山がなくなるまでやってもらいます。カードの順番がランダムに変えられたことになります。
それから9枚を取り上げて、方向違いの4枚と5枚にプルアウトして、いったん5枚を置き、「4枚のカードを四隅に置きます」と言って、3 x 3の四隅に順番に置きます。「5枚を間に順番に置きます」と言って、残りの5枚を順番に残りの空間に置いて、裏向きでの魔方陣を完成させます。
それから今年の年号が2022年であることを告げてから、カードをすべて表向きにして、どの列の合計も2022であることを見せます。来年の正月に見せるマジックとして利用してください。最初にどのように配列しておくかは、あなたが考えてください。
(つづく)