“Sphinx Legacy” 編纂記 第46回
加藤英夫
出典:”Sphinx”,1923年7月号 執筆者:Claudio
Thayer sells a color changing deck for $1 that is on the same principle as the following; in fact, it was from a brother magician that I got the secret and from it I worked up the other six effects (first effect is explained by Thayer”).
Claudioはこのように書いて、そのあとやり方を解説していますから、Thayerで販売している’Color Chnaging Deck’の仕掛けを公表していることになります。販売している商品の仕掛けを公表することが、たとえその商品の応用トリックの解説であるとしても、許されることでしょうか。ちょっと首をひねります。
Claudioが示したカードの仕掛けのイラストは以下のものです。
このように赤いカードと黒いカードがエンドにおける斜めショートカードとなっていて、Thayerの商品としては、どちら側のエンドを弾くかによって、すべて赤いカード、すべて黒いカードとして見せるというトリックとなっています。Cloudioが考えた手順は以下のようなものです。
第1フレーズ
最初に赤いカードと黒いカードが混ざっていることを見せます。それからすべて赤いカードになったのを見せ、そしてすべて黒いカードになったのを見せます。
第2フレーズ
客に黒か赤かを言わせ、その色のカードでカットして見せます。
第3フレーズ
デックを2組に分け、一方が赤ばかり、他方が黒ばかりになったのを見せます。
第4フレーズ
赤いカードの組と黒いカードの組がトランスポジションするのを見せます。
第5フレーズ
1枚のカードを選ばせて戻させると、全体が赤いカードで選ばれたカードだけ違う色です。
第6フレーズ
デックをよくシャフルさせてから、2組に分けてディールすると、一方がすべて赤いカードで、他方がすべて黒いカードに分かれています。
私はCloudioが示した前ページの斜めショートカードの絵を、違う文献で見たような記憶があり、Charles JordanやHofzinserについて私が書いたものをチェックしましたが、見つかりませんでした。Stanyonでもありませんでした。そこで”Card Magic Magazine”を調べたら、’Follow the Leader’の特集の中に、つぎの一文がありました。
ストリッパーデックを使って、同じパケットをすべて赤いカードに見せたり、すべて黒いカードに見せる手法は、雑誌”Sphinx”1907年11月号に、Elisworth Lymanが書いています。
”Sphinx”のその号を見てみると、”A Color Changing Trick”として書かれていました。その解説中のイラストは以下の通りです。その現象を読むと、まさにThayerが販売していた商品の現象通りでした。何のことはありません。Thayerは”Sphinx”に発表されていたトリックを商品化していたのです。
念のために”Card Magic Library”第10巻のショートカードの章を見たら、以下の図とともに、つぎのように書かれているのを見つけました。
エンドショートやサイドショートは、リフルする場所がエンドもしくはサイドの1カ所しかありませんが、コーナーショートは4 カ所あります。斜めショートは、上エンドの左右、下エンドの左右、右サイドの上下、左サイドの上下で、8 種類タイプを作ることができます。
こんな重要なことを書いていながら、そのことをまったく忘れていましたし、斜めショートが8種類作れるというアイデアについて、その後まったく研究していなかったことに驚きました。そのことを思い出させてくれただけでも、Cloudioのトリックを見つけたのは収穫でした。
斜めショートが8種類作れることを利用するとしたら、すぐ思いつくことは、8種類のカードをリフルして見つけることができることです。ある数のカードを4枚とも同じ位置の斜めショートにしておけば、デックをカットしてその4枚を現すことができます。
しかしながらデックには13種類の数のカードがあります。そこで作るのは、2~9までの数のカードで、8種類の斜めショートにするのです。そしてセリフとしては、「1から10までの間で好きな数を指定してください」というのです。2から9までが選ばれることになりますから、シャフルされたデックで、然るべきコーナー近くでカットして、指定された数のカード4枚を現すことができます。
というようなことを考えましたが、1~10の間の数を選ばせるというのは、あまりやりたくありません。万が一、1とか10が言われたらどう対応したらよいでしょうか。その解決法が見つかったのは、このとことを考え始めた翌日のことでした。そしてもうひとつ、たんに4回カットしてフォーオブアカインドを現すのでは、マジックとして色気がありません。その点の味付けのアイデアも思いついて、以下のトリックとしてまとめました。
カット&カット
= 加藤英夫、2021年1月18日 =
* 準 備 *
前述の方法で、Aから8までの数のカードがトップにカットできるように、8種類の斜めショートを配置します。そしてKについては、Aをトップにカットしたときに、ボトムカードとなるようにセットします。以下、Qは2、Jは3、10は4、9は5をトップにカットしたときに、ボトムカードとなるようにセットします。
すべてのカードの裏面に、数がわかるドットマークをつけておきます。
* 方 法 *
最初にフォールスシャフルをやってもいいですが、あまり重要ではないと思います。デックを相手の前に置き、「このように適当なところからカットしてください。少しでもいいですし、たくさんカットしてもかまいません」と説明して、好きなところからカットさせます。カットしたところのカードを抜いて裏向きに相手の前に置きます。
「私の指先の感覚で選ばれたカードを当てます」と言って、選ばれたカードを指先で触ります。そのときそのカードの数を認知します。「わかりました。いまからこのカードの仲間のカードを見つけます」と言って、まずデックの中のそのカードと同じ数のカードがトップもしくはボトムに行くようにカットします。9~Kはそれに対応した数のカードがトップにくるようにカットするわけです。
それからデックを3つにカットします。そうすると、選ばれたカードと同じ数のカードは、3つのパイルのトップもしくはボトムにくることになります。トップの場合はそれぞれのトップカードを表向きにします。ボトムの場合は、それぞれのパイル全体を表向きにひっくり返します。同じ数のカードが現れたことを言います。
それからドラマチックに、選ばれたカードを表向きにします。
(つづく)