“Sphinx Legacy” 編纂記 第77回
加藤英夫
出典:”Sphinx”,1911年3月号 執筆者:A.M. Wilson
Vernon CastleはBroadwayの劇場での彼の役において、新しいマジックをいくつか演じました。
たったこれだけの短い記事を読んで、飛び上がらんばかりに驚きました。’Vernon Castle’の名前は、”ダイ・バーノンの研究”を編纂していたときに、’vernon’で検索すると、よく引っかかった超有名なダンサーです。しかも’Castle’という姓なので、まるで’Vernon’とMagic Castleとの組み合わせで面白いですし、しかも妻の名前がMagic Castle創設者のBill Larsenの妻の名前と同じ’Irene’です。そしてDai Vernonがニューヨークに移住してきた1915年ごろは、Vernon CastleはNew Yorkにおける大スターでありました。
Dai Vernonとのそのような関連性は知っていたのですが、まさかVernon Castleがマジックをやっていたというのを読んで驚いたわけです。Googleで調べても、彼がマジックをやっていた情報は得られませんでした。そこで”Magic Cafe”で検索すると、Anatoleというメンバーの以下の投稿がありました。
私はVernon Castleに関する経歴を調べてみました。すると”Wikipedia”につぎの記述がありました。”Vernon Castleは、パブ経営者の息子として英国のNorwichに生まれ、土木技師としての訓練を受けていました。彼は1906年に、彼の妹のCoralie Blythとその夫Lawrence GrossmithとともにNew Yorkに移住しました。妹夫妻は一流の俳優でありました。彼はLewis Fieldsから小さな役をもらい、そのあとコメディ俳優とマジシャンとしての実績を重ねていきました”。
私はあわてて”Wikipedia”を見てみましたが、”Wikipedia”はよく書きかえられるので、マジシャンであったという表現はありませんでした。本当に彼がマジックをやっていたなら、”Sphinx”の他の号にも記事があるかもしれないと思い検索したところ、1913年3月号にはつぎのような記事がありました。
英国のマジシャンでありダンサーであるVernon Castleは、現在New Yorkで公演中の’The Sunshine Girl’でたいへん好評を博しています。
はっきりとマジシャンでありダンサーであると書かれています。さらにSphinx”1914年5月号には、つぎの記事がありました。
アメリカ東部が現在、Castle人気で盛り上がっています。Vernon Castleは巧妙なマスコミ対応と、素晴らしいショーマンシップによって、ダンス界全体を席巻しています。Vernonのやることはすべて洗練されています。New Yorkはまさに彼の話題で沸騰しています。ネクタイ、靴、帽子など、あらゆるものに彼の使用しているものが真似されています。彼の人気に火がついたのは、Lew Fieldとともに、Henpecksのショーでマジックを演じたときです。彼は数年まえに英国でマジシャンとしてスタートしましたが、いまや大都市を忙しくツアーして巡り、1日に$1000も稼ぐ大スターとなったのです。
1日のギャラが$1,000ということは、今日の$25,000ということです。それだけ活躍したエンタテイナーがマジック界での歴史の中にはほとんど刻まれずに、ダンスの世界でのスーパースターとしてだけ語られているのは残念です。
(つづく)