“Sphinx Legacy” 編纂記 第58回

加藤英夫

出典:”Sphinx”,1927年3月号 執筆者:Max Holden

Cardini at the Riverside last week in New York.

Cardiniの名前を”Sphinx”の中で初めて見たような気がしたので、もういちどこれ以前の”Sphinx”をチェックしたら、以下のものを見落としていました。Cardiniがアメリカに上陸するまえの、たいへん短い記事ばかりでしたので、目に止まらなかったようです。

1924年12月号
Cardini is playing Australia with a card act. Has he ever met Billy O’Connor?

1925年11月号
Cardini. better known to English Magicians as Val. Raymond, played the Tivoli Circuit and is now on the Fuller Time. He is undoubtedly one of the greatest card manipulators to visit Australia. He will probably tour Africa and America next year.

1926年7月号
I hear that Cardini sailed for America.

Cardiniについて調べていたら、たいへん貴重なYouTube動画を見つけました。John Fischerが、Cardiniの動画はひとつしかない”と述べていましたから、私はすでにある動画を見ていたので、それ以外のCardiniの動画を探そうとはしませんでした。

ところがです。たしかにCardiniのアクトとして違う動画はないのですが、動画クオリティのレベルがまったく違うものを見つけたのです。この動画は画質がよいだけでなく、音声もより明瞭に聞こえます。

上記動画より

まえよりきれいな画質で見て、またCardiniのマジックに感動しました。VernonはCardiniが最高のマジシャンだと言いましたが、私もまったく同感です。

Cardiniのマジックは、見せられているマジックの不思議さだけが芸なのではなく、それに加えて彼の演技、そしてマジックのストーリー、アシスタントとのやり取り、背景、音楽との融合、すべてが素晴らしいのです。いちばん素晴らしいと思ったシーンは、正面を切ってバウを取って終わるのではなく、階段を上りかけて、体が横向きの状態になったときに、最後のポーズを取って盛大な拍手を受ける瞬間です。まさに絵になっています。

私はぶちのめされました。同じ4000人も入るRadio City Music Hallで、Cardiniが大成功して、Vernonが大失敗したことがよくわかります。Vernonがいくらマジックをスムーズにうまく演じたとしても、それはマジックにはなっていても、’芸’にはなっていなかったのでしょう。少なくとも、あの大舞台用の芸ではなかったのです。

そうです、舞台という額縁の中におさまる’芸’になっているかいないか、それが一流のマジシャンとしての分かれ目であることを、いまになって思い知らされました。

私は画面に向かって、心からの拍手を送りました。Cardiniの偉大さに出会えて幸せでした。Cardiniさん有り難う。YouTube有り難う。そして”Sphinx”有り難う。

(つづく)