“Sphinx Legacy” 編纂記 第84回

加藤英夫

出典:”Sphinx”, 1921年8月号 手紙:P.H. Cannon

The Great Chinese Rope-Feat

初めこのトリックの現在のやり方は、New YorkのChatam Streetのみすぼらしいショーショップにあったいうことを聞きました。それがきちんとしたやり方に整えられてから、Broadwayに現れたということです。

2.5mぐらいの2本のロープをまず客が調べます。それからマジシャンは2本のロープを上着の両袖に通して、上着をロープにつり下げた状態にします。さらにロープを結んで上着が取れないようにして、ロープの端を2人の客に持たせます。マジシャンは上着の中に両手を入れて、2人の客にロープを強く引かせます。すると上着がロープから外れます。

このトリックは、ロープに特定の準備をしておくことによって可能です。ロープが調べられたら、マジシャンは2本のロープをそろえる動作をしながら、密かに1本のロープに輪ゴムをかけて中央までずらし、そこでもう1本のロープの中央を輪ゴムではさみます。すると2本のロープは図のような状態となります。

それからそれぞれのロープの両端を上着の内側から袖の中に通し、袖口から出てきたそれぞれの両端をそれぞれの客に持たせます。上着がさらに取れないようにと説明して、それぞれの客に2本のうちの1本の端を放してもらい、それらの端を結びます。下図。結んだあとのそれぞれの端を2人の客に持ってもらいます。

あとは両手を上着の内側に入れ、挟まれているロープを輪ゴムから外してやり、2人の客にロープを引かせれば、上着がロープから外れます

私がこのマジックを取り上げたのは、”Tarbell Course in Maigc”に解説されている、Harlan Tarbellの’Simplex Court and Tape Release’がこのマジックに関係があると思われるからです。Tarbellは輪ゴムでロープを止める代わりに、ハンガーにロープをかけておき、あとでハンガーからロープを外すことによって、エスケープを実現しています。あとの構造はCannonnの解説と同じです。Tarbellがこの解説を読んでいたとしたら、このやり方をクレジットしておくことが望ましかったと思います。

最初から弱い糸の輪を2本のロープに通しておけば、ロープを離して見せることはできませんが、糸をはずさずに、ロープを強く引くと切れます。その方法を使えば、もしかするとつぎようなことができるかもしれないと思いつきました。試してはいませんので、うまくできるかどうかわかりません。

ロープを両方の袖に通したあと、上着を着ます。その状態でロープを結びます。上着とマジシャンの体がロープに縛られます。そしてロープを強く引かせると、上着とマジシャンの体がエスケープします。

(つづく)