“Sphinx Legacy” 編纂記 第94回

加藤英夫

出典:”Sphinx”,1933年5月号 執筆者:John Mulholland

ThayerがLos Angelesに新しいショップをオープンさせたというニュースです。それはショップのみならず、工場、劇場、ミュージアムなどの施設も兼ね備えたものでした。

Floyd Thayerが長年にわたって夢見てきたことが、4月1日にとうとう実現いたしました。それはLos Angelesの彼の広い敷地の中に、彼の劇場が完成したことです。

[中略]

このマジック用の新しい劇場とスタジオは、Thayer氏によると、今後の営業の本拠地となるとのことです。室内はインド式のデザインで装飾され、舞台まわりや壁はCaro G. Millerによって描かれました。そして昔から今日にいたるマジシャンたちの写真が飾られています。

照明、暖炉、オフィス、倉庫、作業場など、設計されたことはすべて計画どおりに完成いたしました。そして建物の周囲は、芝生、木々、花などがテラス式に配されています。Thayer氏は、皆さんが当地を訪れたときは、ぜひこの新しいマジックの館に立ち寄ってくださいと話しています。

1960年代にMagic Castleがオープンされるひとつまえの時代に、ほとんど同じ地にマジシャンが集まる場所が建てられたというニュースは貴重だと思います。ビッグニュースと言ってもよいほどだと思いますが、この文章だけの短い説明では、あまりにももったいない取り上げ方だと思いました。記事の大半(中略部分)は4月1日のオープン記念式典の状況が説明されていて、施設の詳細があまりにもアバウトであるのが残念です。

詳しい情報を得たいと思い調べると、”Magic Cafe”の’Floyd G. Thayer – Seeking Biographical Info’というスレッドが見つかり、その投稿の中に、”Linking Ring”, 1933年6月号に、’Thayer’s New Studio of Magic – By: C.A. George Newmann’という記事があると投稿されていました。ここにはインド式のデザインというのがわかる、室内の写真を引用収録しておきます。

私がいちばん知りたかったのはとくに劇場の広さでした。9m x 6mと書かれていて、記念式典では100人の客がこの部屋に入ったと書かれていますので、それなら、小規模のショーならできることになります。建物の広さは、24m x 9mということですから、この劇場の4倍の広さということになります。

このショップがオーブンしてから約1年後の”Sphinx”, 1934年4月号に、つぎの短い一文がありました。

Thayerがハリウッドにマジックショップをオープンして以来、この地域でのマジックがまた活発化してきました。

このショップの出現が、この地のマジックを活況づけたことがわかります。’Magic Castle’は1963年に開設されましたが、ちょうど30年まえにこのようなマジシャンのメッカとも言える場所が存在していたということは、歴史的なつながりを感じます。

“Huffpost.com”でこのThayerのスタジオのことを紹介しています。以下の写真は同サイトからの引用です。最前列中央には、Houdini夫人Bessが写っています。

“Huffpost.com”の記事を読むと、このThayersのスタジオがのちのMagic Castleと深い関係があることがわかります。もしかするとこのスタジオなくしては、Magic Castleも誕生しなかったかもしれません。どういうことであったかは、同サイトをご覧ください。

https://www.huffpost.com/entry/brookledge-las-mysterious_b_8062470

(つづく)