“Sphinx Legacy” 編纂記 第96回

加藤英夫

出典:“Sphinx”,1933年5月号 執筆者:広告

この広告を見て、(株)テンヨーの’ダイイングペーパー’が思い浮かびました。もしかしたら同等のものかもしれませんが、イラストにおける紙筒が太いことから、半分にたたまれた紙が丸められたタイプのものかもしれません。いずれにしても、この時点でそれらのどちらかが存在していたのかもしれません。

とそのように私の想像を書いてしまいましたが、想像を当書のような歴史書に書くことは危険です。確認するため、この類いのシルクの紙筒を使ったカラーチェンジについて、”Rice’s Encyclopedia of Silk Magic”を調べることにいたしました。このタイプのマジックは第2巻の’Silk Dyeing’の章に解説されていました。そこにはいわゆる’Dye Tube’を使用したハンドリングが多数解説されていました。’Dye Tube’とは、テンヨー製品で言えば’変色ハンカチーフ’に使われている、シルクを隠しておく筒のことです。

以下は、’Dye Tube’が紙にくっつけられていないタイプの使い方の一例です。テーブルをこのように使える状況では、効果的な方法ですね。

‘Dye Tube’はほとんどは手に隠せる長さのものですが、手に隠せない長いものも’Dye Tube’に属します。そしてRiceの第2巻には、手に隠せる大きさの’Dye Tube’を紙にくっつけておくタイプのやり方が3種類書かれていました。

‘Paper Pocket’というタイトルで解説されてるものは、考案者がHarold RiceとVan Zantとなっており、図104のように紙の端につけたホルダーに、図105のようにDye Tubeをはめておきます。そして紙を広げたときに図105のようにDye Tubeが手の下に隠れます。これはほとんどテンヨーの’ダイイングペーパー’と同じですが、テンヨーのはチューブが紙にくっついています。このやり方が、なぜホルダーを使うのは不可解です。チューブを処理しても、その部分は見せられないのですから。

 

‘Tap-A-Color’というタイトルで解説されているものは、イギリスで考案され、アメリカでは’SELFCON’というタイトルで販売されていたことがある、と書かれていますが、考案者は書かれていません。テンヨーの’ダイイングペーパー’に似ていますが、このやり方は図142のようにギミックが端ぎりぎりについているので、図143のように紙全体を広げることができます。

つぎに解説されているのは、2番目のやり方のチューブの付け方を少し変えた方法で、チューブを紙の反対側にまわしやすくしてあるものです。ですから、紙の表裏を見せやすくなります。Riceの第2巻には、’Secret Tube’というタイトルで解説されていますが、”Genii”, 1944年2月号に発表されたものの再録ですから、ここには”Genii”の方から引用することにいたします。

“Genii”の解説はかなり長文なので、ここには収録いたしません。”Sphinx Legacy”には収録いたしました。

(つづく)