島田晴夫の神髄 第7回
加藤英夫
島田晴夫とノベール・フェレの接点
この論評は第6回で終了いたしましたが、その後、フランスの一流マジシャン、ノベール・フェレ師との交流があり、その交流を通して、島田師やフェレ師のマジックにおける重要事柄が明白になりましたので、この第7回を追記させていただくことにいたしました。ここに記すことは、第4回の「島田師の後ろ姿から学んだこと」と重複する部分がありますが、たいへん重要なことなので、フェレ師とのやり取りをお伝えするために、あえて記載することにいたしました。
この論評の第4回において、島田師の演技は、マジックの不思議さを生み出す動作のみならず、演技者としての全体の動作を支配するコレオグラフィによって裏打ちされていた、ということを説明いたしました。そのようなことを講演で話したことを、フェレ師に説明するために、講演後、中村安夫さんを通して、以下のようにフェレ師に伝えました。
| ハロー・フェレさん、
私は、島田晴夫という偉大なマジシャンについて、こんどの講演会で話をさせていただいたことは光栄なことです。私は短期間ではありますが、島田師が鳩出しの演技を完成しつつあるころ、アシスタントを務めさせていただいたことがあり、そのときに学んだことを今回の講演で話しました。 島田師の演技を観客席から見ると、手の操作、足の運び、体全体の動きが同時に見えますが、背後からは、手の動きはあまりよく見えず、顔の表情はまったく見えません。よく見えたのは、島田師の体全体の動きです。 後ろから見たからこそ、何歩か前に足を運ぶ、そして止まる、そして向きを変える。ときには顔の向きだけを変える。そのような体の動きがはっきりと認識できたのです。まさに島田師は、いかにもダンサーのコレオグラフィに該当するような、マジシャンとしての立ち振る舞いがきちっとされていたことが、私の目に焼き付いています。そのようなことも今回の講演で話しました。 そしてフェレさん、あなたの演技でもそのようなきちっとした舞台での立ち振る舞いがされています。その点では島田師の演技との共通点があるように感じます。島田師の演技を称賛するのと同じように、フェレさんの演技も私は素晴らしいと思っています。 2003年のFISMであなたがグランプリを受賞したとき、あなたとMahka Tendoと私で、授賞を祝った日は、私の宝物みたいな思い出です。今後のご活躍を期待いたします。 加藤英夫 |
そして講演が終わってから3週間後、私にとっては胸が打ち震えるようなメールが、フランスから中村氏を通して届きました。フェレ師の許可を得て、紹介いたします。
| 加藤様
温かく、そして心に深く響くメッセージをありがとうございました。 島田晴夫氏についてのあなたの言葉を拝読し、大変感動いたしました。特に、彼のステージでの存在感や、まるで振り付けのように緻密な全身の動きを回想されている箇所に心を打たれました。 島田氏は、私にとって常に計り知れない尊敬の念を抱く人物であり、マジックの歴史において、真に唯一無二のアーティストです。私のパフォーマンスを彼の存在と関連付けて言及していただいたことは、大変光栄であり、深く感動いたします。 2003年のFISMで、マーカ・テンドー氏とあなたと共にグランプリを祝った日は、私にとっても非常に大切な思い出です。あなたの優しさと、この美しい言葉に心から感謝申し上げます。 深い敬意と温かいご挨拶を込めて ノベール・フェレ |
フェレ師からこのメッセージをいただいて、ますます私はマジシャンにおける’コレオグラフィ’の重要性を確信いたしました。マジシャンはマジシャンであるまえに、エンタテイナーであり、アーティストであるのです。
そして最後に、コレオグラフィについて島田師自身が語っていたことを思い出したので、お話しいたします。残念ながら、このことを島田師がどの機会に語られたのか、その資料が何であったかを記録していませんでした。あとからいくら調べても見つかりませんでした。いずれにしても、島田師が以下のように述べられたことは、しっかり記憶しています。
「マジシャンの演技には、ボディランゲージが必要です」
この言葉はまさに、島田師がコレオグラフィを意識して演技していたことを示す、れっきとした証拠ではないでしょうか。


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