マジックの練習について、私の考察 第1回

加藤英夫

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マジックを練習するということにおいて、いくつかのステップがあります。つぎのステップに分けてみました。

  • ステップ1.そのマジックの不思議さや面白さを知る(第1回)
  • ステップ2.マジックをスムーズにやれるようになるための練習(第1回)
  • ステップ3.マジックを不思議にやれるようになるための練習(第2回)
  • ステップ4.マジックを感じよく演じるようになるための練習(第3回)
  • ステップ5.マジックを美しく、もしくはかっこよくやれるようになるための練習
        • ・・・・レネ・ラバンのインタビューより(第4回)
        • ・・・・”ダイ・バーノンの研究”第3巻より(第5回)

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ステップ1.練習するマジックの不思議さや面白さを知る

マジックの解説書の冒頭には、たいてい”現象”というタイトルで、そのマジックが観客の目にどのように見えるか書かれています。それを知らないでマジックを練習することは、食べたことがない料理をレシピにしたがって作るようなものです。

文章の説明で現象を理解するのは、文章世代の人には当たり前のことでしたが、今日ではYouTubeという便利な媒体があります。公表されたたいていのマジックなら、YouTubeで演技を見ることができます。ただし欠点があります。それは、良い演技があると同時に、悪い演技があるということです。たまたま悪い演技だけを見てしまったら、そのマジックの良さを感じることなく、マスターする意欲を失ってしまったり、よくないやり方を学んでしまったりする可能性もあります。そのことに対して、MN7としてひとつのやるべきテーマとして、つぎのようなことが存在することに気づきます。

現在公開されているYouTube動画を検証して、マジックの演目ごとに参考になる動画のリストを作成し、「このマジックの模範演技はこのYouTube動画を見るとよいですよ」と、世に伝えること。

9月の例会で倉持さんが説明したことについて、“私がやろうとしていることがあります”とお話ししたことは、そのようなリストを作るということです。私はカードマジックについて、バーノンの仕事が終わったら始めようと考えています。MN7のメンバーで手分けして、分野ごとにそのようなリストを作るのも一案であると思います。

ステップ1は、練習を始めるまえのステップですが、現象を把握しないで練習することは、目標を設定しないで行動することになります。

[具体例]

‘6枚ハンカチーフ’は、いままでこのマジックを演じたマジシャンのすべてが間違ったやり方をしています。天海師の奥様でさえ、本来のやり方をしていません。

このマジックは、最初にバラバラの6枚のハンカチーフがあり、その内の3枚を結ぶと、他方の3枚がそれに共鳴して、結ばれてしまいます。現在、両方とも結ばれた状態になりました。

つぎに一方の3枚をほどくと、他方の3枚もそれに共鳴して、ほどけてしまいます。

英語名で’Sympathetic Silks’といいますが、’Sympathetic’とは、共鳴するという意味です。

この例は、’Sympathetic’というプロットの通りに演じなくてもマジックになってしまうため、いままでのマジシャンがそのプロットに気づかずに、たんにハンカチーフが結ばれたり、ほどけたりする現象として演じてきてしまったのです。

ステップ2.マジックをスムーズにやれるようになるための練習

“OUR MAGIC”でオーケストラのリハーサルについて、マスケリンがつぎのようなことを述べています。

一人一人のパートがマスターされていないのに、全体がリハーサルしても無駄である。

このことを教訓とすると、マジックの練習について、つぎのようなことが導かれます。

ひとつひとつの部分を体得するまえに、手順全体を通して練習してはならない。

たいていの人は、手順を続けてやりながら、部分の練習を同時にやっているのではないでしょうか。
そこに効率の悪い練習のやり方の根源があります。

まず、各部分をスムーズにできるように練習するのが先です。そうすれば、手順練習をするときに、まごついたり、間違ったやり方をせずに進めることができるのです。

[具体例]

右手で何かを出現するときに、そのミスディレクションによって左手が何かをスチールする場合、出現させるのとスチールするのを同時にやる練習をするのではなく、先にスチールするのを練習し、スチールがスムーズにうまくできるように習熟してから、初めて右手で何かを出現させながらスチールする練習に進んだ方がよいのです。

(つづく)