“Sphinx Legacy” 編纂記 第73回
加藤英夫
出典:”Sphinx”,1910年6月号 執筆者:A.M. Wilson
‘the man that keeps them guessing’と称されるOzarra Zelmoが、数日まえに当事務所に電話をかけてきました。彼は近々またパフォーマーとしての活動を再開するとのことです。Zelmoは近年におけるもっとも巧妙なコインマニピュレーターの一人です。
“Sphinx”を調べるとき、ページの端から端まで目でスキャンして、何か目につくことがないかを見つけるわけですが、いままで見たことのないマジシャンの名前を見つけたときは、ネットで検索してみて、取り上げるべきかどうか決めます。この記事は、Ozarra Zelmoが”Sphinx”のオフィスに電話をかけてきた、というだけのものですから、たいていその程度では調べようとはしません。ですが名前がたいへん奇妙なので、いちおう検索してみました。
するとGoogle検索で、たった1件だけヒットしました。1件だけヒットしたというのは、いままでの調査で初めてのことです。そのサイトが以下の、カード投げ専門のサイトでした。
https://throwingcards.blogspot.com/2018/07/the-great-zelmo-man-who-keeps-them.html
このサイトに以下の写真が掲載されていました。まるで列車のような車で、ショーに使う道具を運んでいたようです。
サイトではこの写真について説明されていませんが、この写真が”Linking Ring”,1930年2月号からの引用だと書かれていましたので、その号を調べてみました。
ところが写真については、やはり何も説明されてなく、たんにZelmoのカードトリックが解説されているページにこの写真が添えられていただけでした。それでは当書に取り上げる価値もないと思い、これ以上の調査を断念しようとしましたが、念のため、カードトリックの解説に目を通してみました。
そうすると、’A Four Ace Trick’ by Great Zelmoと題されたカードトリックは、’Four Ace Assembly’でいままで私が読んだことのない原理によるものであり、記録に残しておくべきものであることがわかりました。かなり詳しく解説されていますが、ここでは原理がわかるだけだけの簡単な説明にとどめておきます。
4枚のAをテーブルに並べ、それぞれのAにエクストラカードを3枚ずつのせます。相手に1つのパイルを指定させ、そのパイルを取ってデックのトップに置きます。密かに3枚目の下にブレークを作ります。2組目のパイルを指定させるとき、ブレークの上の3枚を密かにパスしてボトムにまわします。2組目をトップに置き、3組目を指定させるときに、トップ3枚をボトムにパスします。3組目をトップに置いて、同様にトップ3枚をパスし、最後の組をトップにのせて、適当なセリフを言いながら、トップ3枚をパスします。これで4枚のAがトップに集まりました。
Zelmoはこのあと、4枚のAをパームしてスチールし、どれかの客のポケットに密かにロードしてしまいます。4人の客から、マジシャンズチョイスでポケットにAをロードした客が選ばれたことにして、その客のポケットから現します。
Zelmoのやり方を利用して、より現代的なアセンブリーの形式に近い形に構築してみました。
4枚のAを並べて、それぞれに3枚ずつエクストラをのせるところまで、原案と同じです。「4組から1組ずつ除外していき、最後に残った組に4枚のAを集めます」と説明して、1組を指定させ、それをデックのトップに置き、ダブルカットを行いますが、トップ3枚のエクストラカードをボトムに運びます。あと2組指定させて同じことをやります。トップに3枚のAが集まりました。その3枚の下にブレークを作っておきます。
最後に残った組を表向きにして広げ、そこにあるAが何であるか言ってから、まずAを取って表向きにトップに置き、そのあと1枚ずつエクストラカードをトップに表向きに置いていきます。そしてブレーク上の7枚でブラウィアドオンをやります。トップに4枚のAが集まりました。魔法をかけてからそれらを現します。
(つづく)