コーヒーブレイク・その1 ~たまには、マジックと全く違うお話を~

藤城亜砂

イチゴは不思議な食べ物だと思います。

見た目の可愛らしさ、甘酸っぱいお味。チャーミングで魅力的なフルーツです。

「大好き」という人はいても「嫌い」という方には滅多にお目にかかりません。

ところが、私の娘はその珍しい「イチゴ嫌い」派なのです。

彼女が幼稚園生の時です。デザートのイチゴを前に

「ママ、イチゴの白いツブツブは種?」と聞きました。

私は「そうよ」と答えました。

……別に変な会話ではないでしょ?何処にでもある親子の会話です。

暫くしてテーブルを見ると、娘のお皿のイチゴは無残にも潰されまくってホラー映画のような真っ赤な汁で染まっていました。

ビックリした私。

「どうしたの?」と聞くと

「種は食べちゃダメなんでしょ?」

見ると我が子の手も真っ赤です。どうやらイチゴの白いツブツブを全部取ろうとしてグチャグチャになっちゃったようなのです。

そうですね、確かに「スイカの種は食べちゃだめよ」とか、種はとにかく食べないように日頃言ってました。

でも、まさか、イチゴのツブツブまで取ろうとしてたなんて……いえ、彼女に罪はありません。

自分の知識の中で懸命に判断したのですから。

しかし、気持ち悪いほど潰されまくったイチゴは食欲を大いに削ぎました。

「いらない」

と一口も食べずに食卓を離れた彼女はこれ以降、イチゴを口にしていません。

今でもケーキにイチゴが入っていると丁寧に取り出して残します。

ルビーのような光沢のイチゴを見るたびに、私はあの時、どう答えれば良かったのかな……と、彼女に対して申し訳なく思うのです。

……とは言いつつも。

私は私。

イチゴ、大好き、いただきまーーーーーす!