“Sphinx Legacy” 編纂記 第4回

加藤英夫

今回は、マジシャンの出演記録記事をもとにして、そのマジシャンについて調べたものです。

出典:”Sphinx” 1903年9月 執筆者:M. Inez

Warren Keane

J. Warren Keane, the card and billiard ball manipulator,is back in New York after an arduous and successful season on the road. He is at present appearing at Paradise Roof Gardens. Mr.Keane leaves shortly for London, where he is booked in the music halls.

“MAGIC” 2011年3月号より

Max Holdenの””Programmes of Famous Magicians” (1937年)は、当時の有名なマジシャンの演目解説書として有名ですが、Wrren Keaneの演技はつぎのように書かれています。

幕が上がると舞台中央で女性がピアノを弾いています。キーンが登場し、彼のセリフはピアノに合わせた歌か韻を合わせた言葉です。そして彼は持っているケーンとハットでテーブルを作ります。そして’Production of Two Silks’、’Smoke Appears in Glass’、’Torn & Restored Paper’、’Vanishing Cigarette’、’Vanishing Silk’、’Torn & Restored Paper’、’Untying Silk’、’Diminishing Cards’、’Silk Into Pocket’、’Card Sleights’ (Production of Full Pack of Cards from the Airを含む)が演じられます。

ケーンとハットでテーブルを作ると書かれていますが、ケーンをひっくり返すと3本の脚が出て、上にハットをのせるやり方だと思われます。今日でもよく使われていますが、100年以上まえに使われていたのですね。

Dai Vernonは”Genii” 1982年3月号の’Vernon Touch’において、 ‘Untying Silk’はWarren Keaneが初めてやったと述べています。’Untying Silk’というのは私の記憶では、リールを使ってゆっくり結び目がほどけるやり方だと思いますが、念のため確認することにしました。”Google”や”Ask Alexander”では、まったくヒットしませんでした。もしかするとHarold Riceの”Encyclopedia of Silk Magic”の中にあるのではないかと調べたら、ありました。

タイトルが‘My Untying Silk Routine’となっていますから、これは原案に対するJoe Homcheckの見せ方のバリエーションであるということです。ということは原案の名前は’Untying Silk’であることになります。

というようなことだけで、このマジックの原案者がWarren Keaneであると断定してよいかどうかわかりませんが、判断材料として有力なもののひとつではあります。なおこのトリックは、”Tarbell Course”では’Educated Knot’と呼ばれています。’Serpent Silk’として販売しているショップもありました。どちらも考案者は示されていません。

“Sphinx”におけるマジシャンの紹介記事には、演目を詳しく説明しないものがほとんどです。私たちのいちばん興味のあることは、そのマジシャンがどのようなことをやっていたかということですから、私はなるべく他書からそのような情報を見つけて、上記のように書くことにしています。

そしてそのマジシャンがやっていたマジックが、そのマジシャンのオリジナルである場合、上記ような確認作業を行って補足し、マジック考案者の資料として役立つようなものにしようとも考えています。

(つづく)