「鳩出し」のオリジナル

チャニング・ポロック(Channing Pollock1926-2006)

小澤洋一

鳩出しはマジックの花で「鳩を出せれば一流」と聞いていた。私はシルキー渚先生から教わって、毎回ボランティアで「鳩出し」を演じている。客も鳩を出さないと「鳩はどうした?」と苦情を言う。
基本はシルクを振ってシルクから出すことで、体に鳩の入った袋を隠しておくのである。これを発明したのはイタリア生まれのセノール・トリノであり、著書の「ダブテイル・デセプション」に以下のことが書かれている。

ダブテイル・デセプションDOVETAIL DECEPTIONS(セノール・トリノ1955年著)
著者のセノール・トリノ(Senor Torino1908~1994)はイタリアに生まれで3歳の時に米国に移住した。1937~1938年頃に鳩を使うアイデアを持った。手袋から鳩を出すのである。
その後(1945年頃と思われる)、シルクを振って体から鳩を出す方法を考案した。トリノ・ダブ・バッグ(鳩袋)を使う方法である。演技の5分前に鳩をバッグに入れる。

セノール・トリノ(Senor Torino1908-1994)

トリノはこの方法をチャニング・ポロック(Channing Pollock1926~2006)に教えた。ポロックは1950~1960年代に芸術的鳩出しで一世を風靡した。1960年イタリア映画「ヨーロッパの夜」は世界中のマジシャンを魅了し、多くの模倣者を出した。
さて、「鳩出し」そのものは1700年代から世界、日本で演じられてきた。1700年代の鳩出しの絵を添付する。袖の中に、あるいは物の下に隠しておいて出す方法である。それを袋に入れて好きな時に出せるようにしたトリノの功績は計り知れない。

ゼイ・リブド・バイ・トリックス(ピエトロ・ミッチエリ2017年著)1733年に鳩を出したマジシャンの絵。

天狗通(1779年平瀬輔世著) 鳩をこよりで縛っておき膝の間に隠しておく。扇子の陰でこよりを取って鳩を飛ばす。

(2021/3/14)

(2021/8/9追記)

「トリノ・ダグ・バッグ」を「鳩袋」としましたが、これは金盛友哉さんが指摘されたように間違いです。
「ダグ・バッグ」を「鳩袋」と翻訳したのは間違いです。
現在私たちが使っているような「鳩袋」については本には書かれていません。
「トリノ・ダグ・バッグ」は「エッグ・バッグ」のように空であると見せて鳩を出すトリノが考案したギミックです。
体からスチールのために用いるものではありません。
私の思い込みでした。間違いを指摘していただいた金盛さんに感謝します。

トリノが「シルクを振って体からスチールする方法」をポロックに教えたのは間違いないですが、内容は不明です。
本には「鳩をシルクで包んでスチールする方法」を紹介しています。
「鳩袋」について書かれていませんが、そのようなものを使ったと推測します。

訂正してお詫びします。

小澤洋一

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