“Sphinx Legacy” 編纂記 第44回

加藤英夫

“Sphinx Legacy編纂記”では”Sphinx Legacy”から、少数ページでまとまっている題材を紹介していますが、実際は多くのページ数を占めるものが多数あります。今回取り上げるBautier De Koltaに関しては、”Sphinx” 1903年10月号にBautier De Koltaの死亡記事が見られた時点で、彼についてのBiographyや、彼の代表的な演目について18ページにわたって詳細に紹介しています。

ここでは、彼の代表作である’Vanishing Lady’について、一部を抜粋して見ていただくことにいたします。

‘Vanishing Lady’

これはのちに’De Kolta Chair’とも呼ばれる名作イリュージョンです。今日でも多くのマジシャンが演じますが、多くのやり方が、新聞紙を椅子の下に敷くという、デコルタのやり方を踏襲していません。新聞紙を敷いたから、床に抜けるのが不可能であると感じさせることと、その要素を省いて演じた方が迫力があるか、つぎのリチャルディの演技を見て想像してみてください。

De KoltaはパリのEden Theaterで’Vanishing Lady’を中心としたショーを続けていて、好評なので契約が更新し続けて、予定していたロンドンのEgiptian Hallでの出演ができなくなりました。彼の’Vanishing Lady’を見たマジシャンが何組か、すでに真似してロンドンでやっているというので、彼はCharles Bertramに代役を依頼して、ロンドンでDe Koltaとまったく同じやり方で演じてもらうことにしたのです。

驚くべきことに、Alexander Herrmannについて調べているときに、’Vanishing Lady’のやり方が詳細に解説されているのを見つけました。その本には色々なイリュージョンが解説されているので、当書においてかなり引用させてもらうことになると思います。

とこのように書いたあと、Albert Hopkins/Henry Evans著 “Magic; stage illusions and Acientific Diversions, including trick photography”(1897年)に書かれている解説を翻訳引用していますが、ここでは図だけ引用し、簡単に説明します。

図1は切り込みのある新聞紙ですが、なぜ女性の体の一部が描かれているか、原著の説明を読んでもわかりません。図2は椅子の陰に隠れている頭部のギミックですが、女性に布をかけるときに、図3のように起こします。そして女性は図4のようにトラップから舞台下に抜けます。

しかしながらこの解説通りにはできません。そのあとほとんど正しいやり方が書かれているのを見つけて、収録しています。 

Vanishin Ladyの正しいやり方

前述の’Vanishin Lady’の説明は、Albert HopkinsとHenry Evansの解説によるものでしたが、いったんそれを収録したものの、あとから実際のやり方とは違う点があるように感じてきました。女性の頭部の形のギミックは、後頭部の部分だけあればよく、それから下に広がっている部分は椅子の陰に隠しきれません。もうひとつの点は、トラップの位置です。椅子よりも少し前にありますが、そうすると女性がトラップに入るときに、その部分の布が前に膨らんでしまいます。

そこでWill Goldstonの解説を参照したところ、その2つの点が私の考えていた通りであることがわかりました。Will Goldston著の”Secrets of Famous Illusionists”(1933年)から、図だけを引用して、私が説明いたします。

頭部のギミックは、図のように後頭部のみの形です。この図でもわかりませんが、それが椅子の後ろから回転させてちょうど女性の頭の高さに位置するようになっています。

トラップは椅子の真下にあり、後ろの方が蝶番でとめられていて、前の方が女性の重みで下に下がります。そのとき同時に’Knee Rods’と書かれている棒が突き出るようになっていて、女性の両足の膝があるような膨らみを発生させます。それは頭部のギミックの上げ下げと同調するようになっていることが、図でわかります。

布がかけられた瞬間にトラップから降りた女性は、図のように穴の下にある段に立つことができますが、これはリチャルディのように、布をかけたあとに女性が肘掛けの位置で布を動かして、まだそこに手があることを示すために必要です。しかしながらDe Koltaの演技では、布をかけたあと、そのような女性の手の動きは見せていないと、私はいままで読んだ説明で理解しています。

なお、リチャルディのやり方を行うにしても、女性の位置はもっと下の方にあるべきです。両手を伸ばしてちょうど肘掛けの位置で布を動かすのです。そのように体が下にあった方が、素速く体をトラップの中に隠すことができます。

HopkinsとGoldstonの解説の違いは、私の推測では、前者は実際に使われた道具を確認して書いているのではなく、後者はプロマジシャンですから、道具をよく知っていて書いているのだと思います。

さらにそのあと見つけたWill Goldstonの”Stage llusions”(1912年)に、以下の図がありました。同じGoldstonが書いていながら、トラップに入った女性の高さが違っています。こちらの方が、両手を伸ばすと肘掛けの位置で布を動かせるので、リチャルディ式のやり方には適しています。もしかしたら、Goldstonもそこで布を動かして見せたのかもしれません。ただし、この図のようにいっぺんにこの位置まで体を入れるのは危ないですから、途中にステップのようなものが必要だと思われます。

布をかけるときのマジシャンの動作と女性の動きについて、私の推測を書かせていただきます。仕掛けを実際に見たことはありません。あくまでもここまでに得られた情報にもとづく推測です。

1.女性は椅子に腰掛けるとき、肘をしっかり肘掛けにかけ、指先は偽の肘棒を現すためのスイッチにかけておく。足先はフラップの穴より前の床に置く。
2.マジシャンは布をかけつつ、頭部ギミックを椅子の陰から前に起こす。同時に偽の膝棒が出る。
3.布がかけられたら、女性はスイッチを押す。トラップが開く。
4.女性は両肘で体をしっかり支えて、足先を穴に下ろし、途中のステップに置き、さらに下まで降りる。
5.そのあと両手を伸ばして、膝のあるべき位置で布を動かします。
6.女性は身をかがめて穴の中に入り、そのままではトラップの蓋が上がらないので、いまいる位置よりも前方から下方に逃げます。するとトラップの蓋が閉まります。
7.マジシャンが布をどけて、女性の消失を見せます。

 

(つづく)

“Sphinx Legacy” 編纂記 第44回” に対して5件のコメントがあります。

  1. 中村安夫 より:

    ダグ・ヘニングが1975年のTVスペシャルで実演したドコルタ・チェアの映像がYouTubeで見られます。
    たぶん、日本では放映されていないように思います。
    (注)池田俊秀さんからの情報提供により、この映像は1982年11月14日にNBCから放送された「ブロードウェイの魔法:完全なファラオの像:Magic on Broadway: Statue of the Pharaohs in Full」のものであることが判明しました。
    Doug Henning Dekolta chair illusion(1975)

  2. 中村安夫 より:

    デビッド・カッパーフィールドもTVスペシャルで2度演じています。
    最初は1979年の第2回TVスペシャルで日本では1980年3月1日にNHKから放映されました。
    36:30~40:10がAttic Illusion (DeKolta Chair) です。
    私は幸運にもこの番組を自宅で観ていました。この時から私はカッパーフィールドの大ファンになりました。
    あれから42年も経ちましたが感動は色褪せないものです。

    The Magic of David Copperfield II – 1979

    1. 中村安夫 より:

      20年以上も前に書いたショーレポートが私のWebサイトに掲載されています。未完(To be continued)なので今年中には完成させたいものです。
      David Copperfield TV Specials in Japan (No.1)

  3. 中村安夫 より:

    2回目は1990年の第12回TVスペシャルで日本では1992年12月4日にNHKから放映されました。
    33:00~36:10がThe Attic Illusion:Memories (DeKolta Chair)です。

    The Magic Of David Copperfield XII: Niagara Falls Challenge (1990)

  4. 中村安夫 より:

    珍しい映像ですが、1980年の映画「テラー・トレイン」Terror Trainでカッパーフィールド本人がドコルタ・チェアを演じています。

    David Copperfield In Terror- Dekolta Chair (Girl Vanish From Chair)

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