“Sphinx Legacy” 編纂記 第68回

加藤英夫

出典:”Sphinx”,1929年11月号 執筆者:John Mulholland

Del O’Dellとは、新しいコメディマジシャンの名前です。これまででもっとも面白いコメディマジシャンの一人であると言っても過言ではありません。彼女はいまRKOに出演していますが、そのあとBostonでの6週間の仕事が控えています。

Google.comより

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Del O’Dellの名前が初めて出てきましたので取り上げました。最初からコメディマジシャンと呼ばれていたのは、いままで写真だけで知っていた彼女のイメージとは合致しませんでした。”Sphinx”,1930年3月号には、William Frazeeがつぎのように書いています。

Del O’DellはVan Hovenと同じアクトを演じています。評価はたいへん好評です。

女性マジシャンがVan Hovenと同じようなハチャメチャなコメディマジックをやるというのです。女性がHovenのようなことをやるというのを想像できませんが、それを本当にやっていたことがわかる指摘が、”Magicpedia”におけるO’Dellの紹介にありました。

Dell O’Dell (1897-1962)は、本名Nell Odella Newtonとして生まれ、のちにアメリカの女性プロマジシャンのロールモデルと言われる存在となりました。そしてテレビに初めて登場したマジシャンでもありました。

彼女の絶頂期には、”The World’s Leading Lady Magician”とか”The Queen of Magic”と呼ばれました。

Dell O’Dellの父はカーニバルで働いていました。彼女は小さいとき、父からマジックを習い始めました。彼女は気の利いたセリフに合わせて演じるスタイルを築きましたが、それは彼女のトレードマークとなりました。彼女の韻を踏んだセリフは、専門家に注文して作らせたと言われています。

彼女は有名なジャグラー、Charles Carrerと結婚しましたが、彼が彼女のマネジメントを担当し、道具も製作いたしました。彼らはNew YorkとFloridaとCaliforniaに住居を構えました。

彼女は早期にFrank Van Hoven (1886-1929)のコメディアクトを演じる権利を買い取り、彼女に合わせてアレンジした演じ方で成功いたしました。

彼女は1951年9月14日にLos Angelesエリアで放映開始された、’Dell O’Dell Show’に主演したことにより、テレビにおけるマジック番組のパイオニアとなりました。それはのちにMark Wilsonが1955年にマジック番組に主演したことや、1956年にRichardiが’Ed Sullivan Show’のマジシャン第一号として登場するよりも、先行していました。

O’Dellはマジックに関して幅広く執筆いたしました。”Linking Ring”誌には、”Dell-lightfully”という記事を連載いたしまた。彼女の’Stamp Album’の演じ方は、”Tarbell Course in Magic”第4巻に解説されています。

Nell Newtonは法的にDell O’Dellと改名し、59歳で多発性骨髄腫で亡くなるまで、その名前でマジシャンとして活躍いたしました。彼女は遺言によりUCLSに献体いたしました。

Van Hovenのアクトを Hovenと契約を交わしてやっていたというのです。しかしながら”Genii”,1962年3月号、Dell’ODell追悼号にはつぎの一文があります。

1929年にNew Jersey州ElizabethのLiberty Theaterに出演していたとき、彼女はすごいマジックアクトを目撃しました。それはかのハチャメチャマジシャン、Van Hovenによるアクトでした。そのあとPhiladelphiaに行きましたが、そこでMike KanterとJack Channinの二人に、マジックをやるべきだと勧められました。Van Hovenの死後、彼女はHovenのアクトを土台としてコメディマジックを演じるようになりました。

これには、O’DellがHovenのようなアクトを始めたのは、Hovenが亡くなったあとだと書かれています。契約してやっていた、ということに疑問が起こります。しかしそのことの真相を追って、たとえわかったところでそれほどの意義はないと思われます。それよりも、上記の文章に続けて書かれている以下の文章の方が重要です。

しばらくそのアクトを演じるうちに、彼女には彼女のパーソナリティがあることに気づきました。どうして他人のスタイルで演じていたのだろうと思い立ち、彼女独特のスタイルを生み出したのです。

O’Dellについてよくまとめられているサイトは、以下の”itricks.com”です。

http://itricks.com/news/2013/07/dell-odell-magic-and-rhyme/

このサイトにおけるO’Dellの紹介の中に、つぎの重要な指摘があります。

Dell O’Dellは彼女のアクトを築く上で、脚本家を雇ったことで知られています。ときには道具よりも、台本制作の方により多くの費用をかけていました。

朗読のようなしゃべりに合わせてマジックを演じていたようです。”Genii”のいくつかの号には、正確に彼女が使用したセリフが記載されています。そのようなスタイルが存在していたこと、そしてそのようなセリフの作成にも多大な費用をかけていたことは、プロフェッショナルマジシャンのあり方として、たいへん参考になることだと思います。セリフの例を引用しようかとも考えましたが、英語のものを見ても良さがわからないのでやめました。

(つづく)