第8回「ショウマン・シップ」

中村安夫

石田天海『奇術演技研究メモ』より

「ミスディレクションが奇術技法の重要な要素であるならば、ショウマン・シップは、その奇術を相手に見せる演出の重大要素ということができる。」
「ショウマン・シップとは、人の前に、あるいはステージに立つときの、舞台人としての力量とでもいうべきものである。
それは三つの内容をもっている。
第一、パーソナリティ(Personality)=人格
第二、エジュケーション(Education)=教養的魅力
第三、ウイット(Wit)=機智
すべての芸はその九十パーセントが、ショウマン・シップに左右されると言われている。」
「以上の三要素は、直接奇術に関係しないようでありながら、実は奇術演技をささえる鼎(かなえ)をなすもので実技を生かすも殺すもこれにかかっていると言うべきである。」

【コメント】

ショーン・ファーカー(2014年 横浜)

ショウマン・シップの三つの要素を考えると、ショウマン・シップを磨くためには、奇術のことばかりやっていてはダメなことがよく分かります。人生経験を積まないとなかなか身につかないでしょう。石田天海『奇術五十年』(日本図書センター)表紙の天海師の写真はとても素晴らしいと思っています。この笑顔は天海師のショウマン・シップを見事に物語っています。最近、来日したショーン・ファーカー氏のショウマン・シップも印象的でした。アマチュア・マジシャンの中にも、ショーマン・シップに優れた方がたくさんいます。社会人マジッククラブの発表会を観る楽しみは、そんな方の味のある演技に出会うことかもしれません。

(2014年11月29日)

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