第9回「プレゼンテーション」

中村安夫

石田天海『奇術演技研究メモ』より

「次はプレゼンテーション(Presentation)である。つまり自分の芸を、舞台等で相手に見せる表現方法ということである。
これはショウマン・シップとともに重要なポイントで、この研究を怠ってはせっかくの奇術も台なしとなる。奇術の選定が婦人の衣服の見立てなら、バリエーションは仕立てであり、さてその服の着こなし方がプレゼンテーションである。
奇術の着こなし方というのは、申すまでもなく身ぶり、動作、お話の全体を意味する。」
「また、プレゼンテーションは、身ぶりやお話ばかりではなく、奇術そのものの表現方法をも含んでいる。」

【コメント】

プレゼンテーションは、マジックの分野に限らず、今や「プレゼン」という言葉が社会一般に使われています。記憶に新しいところでは、2020年の東京五輪招致成功の大きな原動力となったとされる最終プレゼンです。2013年9月に行われたこのプレゼンの模様は多くの方がテレビでご覧になったと思います。後日、この素晴らしいプレゼンを指導したのは、マーティン・ニューマン氏だったことを知りました。
マーティン・ニューマン氏によると、
「スピーチやプレゼン、あらゆるコミュニケーションにおいて、最初に考えなければいけないのは、「What mood do you want to create?」(どのようなムードを作っていきたいか)ということ。会場をどのような空気で包みたいか?会場にどのような印象を持ってもらいたいか?それをコントロールできれば、あなたはなんでもできる。」
「プレゼンはスポーツのようなもの。トレーニングが必要なのだ。日本には「一生懸命」という言葉がある。まじめにやるメンタリティでやればできる。ワークハードのコンセプトは日本人にとって新しいものではないので、できるはず。ただ、一生懸命さが、プレッシャー、ストレス、緊張につながる。だからそこにFun(楽しさ)が必要。楽しい気持ちが加われば、マジックが生まれる。そうやって、東京のプレゼンテーションになった。一生懸命さとFunのコンビネーションが重要。」
まさに、マジックを演じる場合に重要なことが語られています。上記以外にも、参考になることがたくさん書かれていますので、以下のマーティン・ニューマン氏インタビュー記事を是非、ご一読ください。

東京五輪プレゼン/マーティン・ニューマン氏インタビュー

(2014年11月30日)

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