第4回「奇術の選定」

ダイ・バーノン氏を囲んだ天海夫妻

中村安夫

石田天海『奇術演技研究メモ』より

「アメリカの奇術界は、他人の演(だ)しものを真似てやるというようなことは許されない。まして奇術道具店で一般に売り出されているような奇術を見せるようでは、相手にされないのが相場になっている。わけて私のようにこれを職業とするものにとっては、自分の創意した奇術以外にステージにかけることは許されない。だからその創意工夫には文字どおり血のにじむような命がけの努力が強制されるわけである。

それではアマチュアはその必要がないか。ないと思われる方はまだ奇術を理解したとはいいがたい。アメリカでは奇術を志すのに、アマチュアもプロもまったく区別がないのである。奇術は人に見せる芸である以上、見せるだけの条件と内容がととのっていなければ問題にならない。したがってアマチュアであるから条件や内容が不備でもよいということは許されない。
そこでどういう奇術を自分の演目種目に選ぶかといえば、自分の個性に合った条件と内容をもつ奇術を選ぶということになる。しかもそれは各人の個性がそれぞれ異なっているのだから、人真似では間に合わない。かくしてついに創意と工夫によって、自分の個性を生かした奇術を生み出さざるをえないことになる。」

【コメント】

天海師が「アメリカでは奇術を志すのに、アマチュアもプロもまったく区別がないのである。」と述べているのは、重要なメッセージだと思います。かつて、ダイ・バーノン氏がプロマジシャンではなかったことを知ったときはとても驚きました。その時以来、私はアマチュアだからという言い訳はしないように努めてきました。
演目については、気に入った作品を何年かおきに演じるようにしています。私の所属する横浜マジカルグループ(YMG)の発表会には、これまで22回出演していますが、
その内訳は、下記のようになっています。
・ゾンビボール:6回
・リンキングリング:3回
・ミリオンカード:2回
・ダンシング・ハンカチーフ:2回
・ロープ:2回
・リンキング・コートハンガー:2回
・パター:2回(シルクと玉子、11枚のお札)
・シルク:1回
・コイン(マイザーズドリーム):1回
・つながる紙:1回

ミリオンカードは、第33回発表会(1996年)以来、演じていないので、来年2月28日の第52回発表会には、19年ぶりに演じてみようと考えています。

YMG第52回発表会(2015年2月28日)

(2014年11月25日)

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