マジックの練習について、私の考察 第7回
加藤英夫
目次
- ステップ1.そのマジックの不思議さや面白さを知る(第1回)
- ステップ2.マジックをスムーズにやれるようになるための練習(第1回)
- ステップ3.マジックを不思議にやれるようになるための練習(第2回)
- ステップ4.マジックを感じよく演じるようになるための練習(第3回)
- ステップ5.マジックを美しく、もしくはかっこよくやれるようになるための練習
- 参考資料 = ヘニング・ネルムス著 “Magic & Showmanship” より =
- ステージ、姿勢、アシスタント、色、照明、音楽(第6回)
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- バランス、足の運び方、座り方、立ち上がり方、かがみ方(第7回)
- 拍手、バウ(第8回)
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- マジックの練習に関する蘊蓄集
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- 前編(第9回)
- 後編(第10回)
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参考資料
= ヘニング・ネルムス著 “Magic & Showmanship” より =
これは私自身の研究のためにヘニング・ネルムスの”Magic & Showmanship”中の、ステージングに関する部分を翻訳したものの一部です。図の文章が英語のままですが、そのまま収録しておきます。参考にしてください。
バランス
バランスというものは、役者にとってもよりも、むしろマジシャンにとって大きな役割をはたします。肉体的なバランスは、精神的なバランスを保つのに関係してきますし、それは観客を支配する上で欠かせないものです。残念なことに、たいてい正しい練習法として教えられてきたものは、ステージ上では正しくないことが多いのです。
肉体的なバランスとは、体のすべての部分でバランスがとれているということです。リラックスしているということですが、たとえばアゴをぐっと引いたとしたり、肩を後に引いたり、胸を突き出させたりすると、リラックスすることができません。図172。本を頭の上にのせて歩く練習をするというのは、正しい練習法ではありません。あなたは本をバランスさせることができますが、本はあなたをバランスさせることはできないのです。
肉体的なバランスをとるのはつらいことではありませんが、図171のような体重を落とした姿勢に慣れている人は、その姿勢を直す必要があります。
図173から図175のようなエクササイズは、どれも簡単ですし、時間がかかるものではありません。1日に5分ずつでもやれば、1週間もあれば、あなたの姿勢はずっとよくなります。
図173の説明
点線のように胸をふくらませ、30秒止めます。そして力を抜いて、実線のように落とします。これが理想的な形です。それ以上空気を吐き出そうとしてはいけません。胸がへこんだり垂れたりしてはいけません。
図175の説明
床に仰向けになり、両手を頭上に伸ばします。アゴを引いて、筋肉をゆるめてそのまま3,4分保ちます。すると、背骨が伸びてきます。
姿勢を直すだけではいけません。正しい姿勢を保つ必要があります。一生続けるべきことです。それはマジックの技法を練習することと同じです。上記の3つの練習方法は、慣れれば1日に2分もあればできるようになるでしょう。
足の運び方
正しい足の動かし方というものは、あなたの見栄えも改善しますし、行っている演技をも改善させます。図176が基本のポジションです。動かずに立つときは、このポジションをとることを心がけましょう。これはアシスタントにとっても大切なことです。このような足の置き方は、足をもっとも美しく見せるものです。まずこれをマスターしてください。
図176の説明
新聞紙を図のように置き、一方の足をまっすぐ線に合わせてのせ、他方の足を45度の斜めの線に合わせてのせます。
あなたが歩き始めるとき、シンプルなルールを守りましょう。それは、向かう方向に近い足を先に出すと言うことです。図177を見れば、そのルールがわかるはずです。
因みに、ステージの袖から出るときは、ステージ後方にある足から踏み出すのが基本です。ある位置から別の位置に移る場合、1歩もしくは3歩で到着するようにしましょう。そうすれば、到着したときに、体が観客の方に向くのです。ただし、足をそろえるための偶数歩目はカウントに入れません。しかも歩きながら図178のように、ゆるやかなカーブを描くようにすれば、より観客の方に体を向けて止まることができます。
うまく構成されたアクトでは、1回に3歩より多く歩くことはまずありません。移動に歩数をかければ、それだけダルな演技となります。もしも多く歩数を必要とする場合には、第一に、短いステップか長いストライドを入れて、リズムをくずす方法があります。第二に、こちらの方が優れていますが、たとえば、袖から出て中央に着くまでに5歩から7歩かかるようなとき、4歩目で観客の方を見て、にっこり笑うとか、何かのジェスチャーを行います。
ステージの後方に移動するとき、観客に背を向けないで行くのには、いくつかのやり方があります。このやり方をマスターしないうちは、一流のエンタテイナーとは言えないでしょう。図179は斜めの移動法です。
多くのマジシャンが、客席からステージに上がるときに、背を観客に向けてしまいますが、これでは観客のコントロールを失ってしまいます。図180は、斜め下がりの方法を、階段を上がるときに応用したものです。図181は、階段がないような低いステージへの上がり方です。
座り方、立ち上がり方、かがみ方
ナイトクラブなどのテーブルで仕事をする場合、彼の印象は、椅子への座り方と、椅子からの立ち上がり方に大きく左右されます。図182は正しいやり方を示しています。左図はおかしく見えるかもしれませんが、あくまでも動いている途中を描いたものです。
両足を椅子の前に入れてから、一方の足が椅子にふれるまで下げて、椅子の位置を確認し、図183、そして座ります。けして椅子の方を見てはいけません。立ち上がるときは図182のように立ちますが、図182のようにサイドの足を後にではなく、前の方に出します。
着席していて、何かを取るとき、図184のように身をかがめて取るのではなく、上半身をまっすぐにしたまま手を伸ばします。図185。
ステージマジシャンが身をかがめるとき、図186のようにやる人が多いですが、図187が正しいやり方です。
(つづく)